リミックスという行為。

「VA - Motown Remixed」
「Remixed & Reimagined:Nina Simone

 キング・タビーが「ダブ」という手法の上にリミックスという行為を「発明」した瞬間から今日まで、数えられないほどの「オリジナルに新たな生命を吹き込んだ」ナンバーが作りだされてきた。ラリー・レヴァンやトニー・ハンフリーズ、音楽を心から愛するDJ、クリエイターの手で生み出される「リミックス」は、時には感動を呼び、稀ではあるがオリジナルを凌駕する出来のモノまで出現する。


 現在では当然の存在であるこの「リミックス」。オリジナルを心から愛する者にとっては「原曲を切り刻む」事に対する抵抗も少なからず感じる時がある。それが「誰もが知っている」ビッグ・ネームならば尚更の事だろう。



しかし、時にそのビッグ・ネームに真っ向から立ち向かい、原曲とクリエイターの手腕で素晴らしい「化学反応」を聴かせてくれるリミックスもある。



 「Motown Remixed」は言わずと知れたモータウンの名曲に、DJ Jazzy JeffやSpinnaといった錚々たるメンバーが果敢に挑戦した一枚。「誰もが知っている」偉大な原曲の魅力を損なう事無く、愛情溢れるミックスに仕上げていて、どの曲も「モータウン」というレーベルの素晴らしさを「リミックス」という行為を通じて物語っているかのよう。特に素晴らしいのはスモーキー・ロビンソン御大の「Quiet Storm」をGroove Boutiqueがリミックスしたヴァージョン。「クワイエット・ストーム」と呼ばれるジャンルまでもを生み出したこの名曲を、ロイ・エアーズをフーチャーし、ジャジーに、吹き荒れる風のSEなども使用して仕上げたこのヴァージョンは、明らかにオリジナルを超えたと言えると思う。



 「Remixed & Reimagined:Nina Simone」は、既に「神格化」した感さえあるニーナ・シモンの名曲たちを、ColdcutやFrancoius K、前述のTony Humphriesなど、これまた偉大な「リミックス・マスター」たちが手がけた一枚。こちらはタイトル通り、彼女のオリジナルの持つ偉大さにとらわれる事無く、クリエイターそれぞれが自身の解釈で「再構築」した結果、ニーナの持つ「ソウル」の神髄に近づいたような奇跡的な一枚。「私には何も無いがこの人生がある」と歌う「Aint Got No, I Got Life」は、オリジナルの持つ「アシッドな暗さ」とは打って変わって、ホーン・セクションや女性コーラスを多用し、「生きる事の素晴らしさ」という歌詞の内容をより際立たせるようなナンバーに生まれ変わっている。ニーナの曲に感じる「魂」を愛するファンには賛否両論かもしれないけど、ジャズやR&B、ファンクと様々なジャンルを行き来し、どんな場面でも「自分」を確立しているニーナのスタイルを思わせるこのアルバムは、一聴の価値あり。


Motown Remixed (Dig)

Motown Remixed (Dig)

Remixed & Reimagined (Rmxs)

Remixed & Reimagined (Rmxs)