4 Hero。

4 Hero / Play with the Changes」


 もはや「ドラムン・ベース」というカテゴリでは括れない、U.KのMarc MacとDegoの2人からなる、ジャンルの枠にとらわれないユニット4 Heroの6年ぶりとなるオリジナル・アルバム。


 「6年ぶり」といってもその間にまさに飛ぶ鳥を落とすような勢いで活動しまくっていた4Hero。自身が手がけたリミックスと、彼らの曲を他のアーティストが担当したナンバーをコンパイルしたその名も「The Remix Album」はNuyorican Soulの「I'm The Black Gold Of The Sun」から始まり、原点であるドラムン・ベースを基本とした優れたリミックスが目白押しで、この種の「リミックスもの」では他の追随を明らかに許さない素晴らしさ。またKenny Dopeなども担当したBrazilikaシリーズでも、まさに「ボーダーレス」な全く違うブラジリアン・ミュージックを聴かせてくれた。「Nu Jazz」というカテゴリで編纂されたコンピレーションに多く収められていたTek 9名義のWeldone Irvinenのカバー「We're Getting Down」は、オリジナルを凌駕した希有な一曲だった。


 待望の新作は、名作「Creating Patterns」に収められた「Les Fleur」でもヴォーカルをつとめたCarina Anderson(DisciplesのCarleen Andersonではない。ややこし)が爽やかな冒頭の「Morning Child」から始まり、明らかにここ数年で彼らが取り込んで来たジャンルの融合が見られる。多彩なヴォーカルをゲストに迎えるという定番のスタイルは今回も踏襲されているが、個々のナンバーの完成度には驚く。なかでもStievieの「Super Woman」のカバーは、一歩間違えればただの「模倣」になる手前で、練り込まれたアレンジでしっかりと「4Hero色」に変えている。


 考えれば「ドラムン・ベース」というある種「特異」なジャンルの中で活躍して来た4Heroは、LTJブケムやGoldie、Roni Sizeといった革新的なアーティスとともに「芸術的」ともいえる作品を生み出しながら、徐々に閉塞的になっていくシーンの中で、自らに「変わる」こと、そして他ジャンルを取り込むことを課した「特殊な」ユニットではないかとおもう。細かく砕かれたパーカッションと太いベース・ラインを特徴とするドラムン・ベースが「ジャズ」に向かうのは自然な流れであるし、「メロディ」や「コード進行」の点からもボッサ、そしてブラジルへ、というところも大いにうなずける。

 
 しかし4Hero4heroである一番の理由は、徹底的に計算された音作りと卓越した「センス」。幾度となく訪れたであろう分岐点で、「足すのか引くのか」「留まるのか先へ進むのか」の選択を余儀なくされ、それをさらりと交わし「誤ることなく」前へと進んで来た4Heroの、新たな「ステージ」が始まる重要な一枚のような気がする。



 長年ヴォーカリストとしてコラボレーションするUrsula Ruckerをフィーチャーした「The Awakening」詩人でもある彼女のポエトリー・リーディングのようなヴォーカルが光る一曲。

Play With the Changes (Dig)

Play With the Changes (Dig)