ベニン発パリ経由全世界行き。

「Angelique Kidjo/Djin Djin」


 ブラジルのバイーヤ・ミュージックと接近,融合したアルバム「Blue Ivory Soul」が個人的に強烈かつ猛烈に印象に残っているベニン出身のシンガー、アンジェリーク・キジョーの新作。



 アフリカンと他の音楽との融合を常に試みながら、一作ごとに貫禄と深みを着実に増しているアンジェリークの今回のアルバムは、とにかく豪華なゲスト陣。

 アリシア・キーズブランフォード・マルサリスジョス・ストーンピーター・ガブリエル爺にマリの盲目夫婦デュオ、アマドゥ&マリアム、ボブの息子、ジギー・マーリーカルロス・サンタナ御大と、普通じゃ考えられない布陣。この大物ばかりをまとめるプロデューサーは、グラム・ロックからの名匠、トニー・ヴィスコンティ


 主に前半をゲスト陣との楽曲、後半部分が彼女のみ、という構成。冒頭の「Ae Ae」から明るいカリビアン・アフリカンなオープニングで惹き込まれ、いままで吸収したエッセンスを惜しげもなく披露するように、目まぐるしく変わるスタイルでテンポよく展開していく。


 がしかし。このアルバムを聴けば聴くほど気になる点がひとつ。このゲストが共演する前半部分で、どうにもこうにもアンジェリークの「味」が薄くなっているような気がする。これだけのゲストに物怖じするタイプじゃないし、「譲る」ような格の彼女じゃないはずなのに、この前半部分が終わった後の「アンジェリーク・パート」が俄然「光って」聴こえてしまう。曲順の関係もあるのだろうけど・・・。


 もちろん、サンタナのギターは悶えるほど「泣いて」いるし、P・ガブリエルの久しぶりに聞く「声」も渋い。ジョスとのストーンズ・カバー「ギミ・シェルター」はカッコいいし、ジギーとのデュエットは微笑ましく、ボブとのあり得ない「If」も想起してしまう。「ワールド・ミュージック」というカテゴリで言えば、間違いなく今年前半の個人的ナンバー・ワンになる一枚。ラストに収められたアフリカン・リズムで飾られる「ラヴェルボレロ」は美しいの一言に尽きる。


YouTubeにアップされた、本アルバムのEPK(プレス向けなどの映像資料)。佇まいや話し方から見ても、彼女はやっぱり、しなやかで「強い」


Djin Djin

Djin Djin