衝撃。ハズマット・モディーン。

「Hazmat Modine / Bahamut


 偶然に思いもしなかった素晴らしいアーティストと巡り会えた時というものは、とてもワクワクする。そしてその「音楽」が耳にしたことが無いようななものだったら、ワクワクを通り越してガツンと鈍器で頭を殴られたような、衝撃をうける。



 ロシア連邦トゥバの、ホーメイ(ホーミィ)を操りグローバルに活躍するグループHuun-Huur-Tu(フーン・フール・トゥ)との繋がりから偶然出会ったHazmat Modine。
 ニューヨークを拠点とする、基本的にはブルースをベースにしたグループ。基本的には、と書いたのは実にいろいろなジャンルを横断しごった煮にした感があるから。ブルース、ジャズ、フォーク、カントリー、レゲエ。オルタナな味もあれば、テックス・メックスを思わせるような瞬間もある。動画を見てもわかるように、少しくたびれたおっさんたち。
 しかしこのおっさんたちが醸し出す「音」が衝撃だった。まさにディープ・インパクト。ギターが2人にドラム、そしてツインのダイアトニック・ハーモニカに、チューバ、テナー・サックス、フリューゲル・ホルンの姿も見える。ベースがいなくて、基本的にこの金管がベース・ラインを奏でる編成。よれたヴォーカルもこの編成が醸す音にぴったりで、実にカッコいい。
 アルバムにはニワトリの鳴き声のSEなどが入っていて、ディープなアメリカ南部のサウンドを思わせる。実際、彼らのMyspaceのページには金管楽器を手にしたネイティブ・アメリカンのバンドの古い写真が掲載されていて、たぶんそのへんをルーツにした音楽を目指しているのだと思う。前述のHuun-Huur-Tuも3曲で参加していて、ホーメイを効果的に使用したコーラスがなぜか「ディープ・サウス」な雰囲気を出すのに絶妙な力を発揮していて面白い。

 
 とにもかくにも久方ぶりに受けた衝撃。ジャズのジャンルで活躍するセッション・ミュージシャンたちらしいが、このメンバーから匂ってくる長年かけて培われた「音楽の澱(おり)」みたいなモノが随所に散りばめられていて、こちらも真っ正面から向き合うような姿勢になるのと同時に、なんだかほんわかした気持ちになるのも不思議。
 これだけ素晴らしい「音」を発しながら、情報が少ないのが実にもどかしい。ネット上でもほとんど触れられていないし、大手のネット・ショップ上のアルバム紹介でも内容の記述は皆無。もっとアナウンスされて然るべきアーティストだと思うのだけど。



 ブルースが好きな人、特にライ・クーダーやトム・ウェィツの「レイン・ドッグス」辺りが好きなひとにはぜひおすすめ。そうでない人も「新しい世界」を垣間見れるかも。



 アルバム・タイトル・トラック「Bahamut」のロシアのTVショー出演時の模様を。チューバにエフェクターかけるのなんか初めて見たよ・・・。

Bahamut (Dig)

Bahamut (Dig)