殉教者の歌。
「Jeff Buckley/Grace」
「Nick Drake/Pink Moon」
だいぶ日が短くなって、「秋の夜長」という言葉がぴったりなこの季節。静かな夜には美しく儚いこんな音楽なんかいいのでは?
オーヴァードーズでこの世を去った夭折の天才、ティム・バックリィ。その息子ということでクローズ・アップされながらも完全に父の存在を追い抜いた彼の傑作アルバム。『天使の歌声』と評されながらも、底辺に流れる力強さが印象的な彼が遺した唯一のオリジナル・アルバム。
激賛された本作に続くセカンド・アルバムをレコーディング中に、ミシシッピ川で溺死という不可解な最期。酩酊状態での事故死とされているが、生来、双極性障害(躁鬱病)を罹患していたということもあって、なんともやりきれない。「Grace」はその『歌声』にまとわりつく優雅さと、芯の強いポジティブさのようなものも感じられて、まさに「歌に殉じた」生涯だったのかもしれない。
「アーティスト・オブ・アーティスト」レナード・コーエンのカバー、「Hallelujah」は無上の美しさ。
私はベストを尽くしたが、まだ不十分だった
何も考えられず、更に御心に触れようと努力した
みな本当のことだ、冗談なんかじゃない
たとえ歌が通じなくとも 私は神の前に立ち
私自身のハレルヤを歌おう
「歌に殉じた」といえば、忘れてはならないアーティストがもう一人。3作のオリジナルを遺し、オーヴァードーズにより26歳の若さで亡くなったニック・ドレイク。
なかでもこの「Pink Monn」の美しさは30年以上経った今でもまったく色褪せない。たった2晩のうちにレコーディングされたというこのアルバムは、歌うことへの熱情につき動かされたニックの最期の煌めきのようなものに満ち溢れていて、聞く側にも体力の消耗を求めるような、ものすごいパワーを秘めている。
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- アーティスト: JEFF BUCKLEY
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