ファントム・オブ・パラダイス。

ファントム・オブ・パラダイス(DVD)」Phantom of Paradise 1975年アメリ
監督: ブライアン・デ・パルマ
脚本: ブライアン・デ・パルマ
音楽: ポール・ウィリアムズ  
 
出演: ポール・ウィリアムズ
ウィリアム・フィンレイ
ジェシカ・ハーパー

高校の頃は、かなりの映画狂だった。毎週末は必ず映画館に入り浸り。気になる封切り映画は必ず観て、あとはそのころ爆発的に増えだしたレンタルビデオ店で名画系や自分なりに観ておかないといけない作品を借りてくる。

 いまでは「ビジネス誌」のようになってしまった「宝島」も、その当時はサブカル一色の紙面で、隔週で発売される中身は中島らもの「啓蒙かまぼこ新聞」やいまやTVで大活躍のデーブ・スペクターがコラムを書いてたりした(髪の毛は黒かった)。現在インタビュー記事などで当たり前のように使われる、文章の最後に付ける「(笑)」もこの雑誌が最初だったと思う。

 そしてこれも今ではポピュラーな<「カルト」という言葉の定義も、「宝島」の映画レビューからであった。そこで紹介される映画の数々は、普通の映画に「飽きてきた」私の鑑賞欲をそそるものばかり。「まぼろしの市街戦」や「エル・トポ」、「ロッキー・ホラー・ショー」「狂い咲きサンダー・ロード(DVD持ってます)」、「恐怖奇形人間(なぜかDVD持ってます 笑)」から、「死霊の盆踊り」まで・・・。ありとあらゆる「普通には観られない映画」のラインナップばかり。そのなかで紹介されていたのが本作「ファントム・オブ・パラダイス」だった。


 言わずと知れた「オペラ座の怪人」のロック・オペラ版。ちょっとオタクで音楽を愛するウィンスロー(ウィリアム・フィンレイ)が、敏腕プロデューサーでありデス・レコードレーベルを率いる、音楽界の影の大物スワン(ポール・ウィリアムズ)に自分の曲を盗作され、無実の罪で投獄されてしまう。脱獄しレコードの原盤を取り戻す為にレコード工場に忍び込んだウィンスローは、誤ってプレス機に挟まり顔を破壊され、仮面とマントを纏うファントムとして復讐を誓うが・・・といったストーリー。


 矢継ぎ早に繰り出されるストーリー展開が、デ・パルマお得意の「映像手法」と相まって、とにかくグイグイ引き込まれる。音楽を担当したスワン役のポール・ウィリアムズは実際にアメリカポップス史上に残る作曲家で、ロジャー・ニコルズと組んでカーペンターズの曲などを作曲した実力者。劇中のステージシーンなどもこの「音楽」あっての迫力と楽しさに満ち溢れている。終盤のロック・オペラのユーモアとその後に続く陰惨なラスト・シーンは衝撃的だった。


 きらきらと輝くような楽しさと、デ・パルマ映画作家としての「毒」がうまくブレンドされた、「カルト映画」と呼ばれるにふさわしい作品。自分の中でも「オールタイム・ベスト10」に入る一本なんだけど、果たして今の若い世代の人々が観て同じような印象を持つのかどうかが気になるところではある。前述した「カルト映画」たちも普通に手の届く作品になった今、「カルト」の持つ意味合いも変わってきた。レンタルビデオで何回も借りてきて観たこの映画も、千円札一枚で手に入る。いい世の中になったということなのかどうなのか・・・。



ファントム・オブ・パラダイス [DVD]

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